神話辞典  世界の神話   大項目  50音 

神話の動物(生物)

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この項目では神話や民話にでてくる動物についてとりあげる。

人間の生活に深くかかわる生き物たちはいろいろな形で物語に登場する。

生活の糧を与えてくれる家畜、人間に危害をくわえる猛獣、独特な姿や能力が人間の想像力をかきたて、 または比喩として起源説話や寓話に取り込まれた身近な生き物たちなど、非常に興味深い。

また、ゾディアック・ベルトの12星座や、干支、トーテム、特定の禁忌に関わる動物の集合といった考えが 世界各地にあり、興味深い。

12支と12星座も共に暦、方位、時に関連し同じ数字での区切りや主に動物が割り当てられているなど共通点が おもしろい。星座も動物が多いし、 12支もアジア各国で若干違うなど、やはり文化圏と動物との関連性は一考の価値がある。(十二支は英語で アジアン・ゾディアック等といわれる)

アジア、北アフリカ、スラヴ、ヨーロッパ等通して、古代世界の神話で多くみられる牛。
やはりアジア、ヨーロッパで英雄物語にはかかせない馬。
特異な姿が恐怖や畏敬の念をおこす蛇。
自由な飛翔へのあこがれ、鳥。
など、様々な動物を表記し、関連する伝承への閲覧の便をはかりたい。

( 山羊    )


【 山羊 】 ( 山羊    )
山羊も人間の生活と関わりの深い家畜で、羊などと比べると乳や肉などのランクは低いが、 より険しい山地でも牧畜できる、荷役できるなど利点もある。
ヨーロッパの神話伝承では山羊は多くみられる。神の盾アイギス(イージス)は山羊の皮だし、赤子のゼウスを養ったのはヤギである。

アイギス(イージス) 【ヘレネス(ギリシャ):武具:盾】
タングニョースト 【ゲルマン、北欧:魔法の山羊】
タングリスニル 【ゲルマン、北欧:山羊】

【 牛 】 ( 山羊    )
アウドゥムラ 【ゲルマン:牛】
グアンナ 【シュメール、バビロニア:魔物:牛】
クジャルタ 【イスラーム:牛】
ハトホル 【エジプト:女神:牛】

【 蛇 】 ( 山羊    )
アポピス 【エジプト:魔物】
イエロ 【オーストラリア先住民族:オーストラリア東南部:大蛇】
ウムガルナ 【アフリカ:アマ・ズールー民族:大蛇】
エクシュキュ 【ヤクート:ドラゴン、竜】
エレンスゲ 【エウシュカルドゥナック:ドラゴン、竜】
オピオン 【ヘレネス:神:蛇】
ケツァルコアトル 【南アメリカ先住民族:アステカ民族:神】
コアトリクエ 【中央アメリカ:アステカ民族:女神:大地:蛇】
ザルティス 【バルト:蛇】
ツチノコ(槌の子) 【日本:蛇,想像動物】
ノヅチ(野槌) 【妖怪,蛇】

【 馬 】 ( 山羊    )
脚が多い=速い、また空が飛べる、といった伝承が各地にみられる。
マジャール(ハンガリー)には「6歩で60マイル進める6本足の駿馬」がでてくる物語がある (黒竜フェルニゲシュ参照 少し劣る5本足の馬もいる)
脚の数については3本足の天空を駆ける馬(ワステュルジ参照)などが珍しいかもしれない。
三国志にも一日千里を駆けるという赤兎馬など名馬が多くでてくる。 血のような赤い汗をかくという優れた品種らしい汗血馬も伝説的である。
重要な機動力だった馬が人間は大好きなようである。また英雄物語を彩る小道具的に名馬も必需品であるようだ。 いまでもヒーローが格好良いバイクや車に乗るのもこの伝統であろう。
※以下の表記での「天馬」は翼の有る無しにかかわらず天を駆ける馬。

※馬に限らない 一角獣(イッカクジュウ) 【大項目】をユニコーンとは別にもうけた。
馬(ウマ,ホースhorse) 【大項目:世界:動物】
アマノフチコマ 【日本:馬】
クサントス 【ヘレネス(ギリシャ):馬】
グルファクシ 【ゲルマン,北欧神話:馬】
ケルピー 【スコットランド:水の精,馬】
シフカ・ブールカ 【ロシア:馬】
スレイプニル 【ゲルマン,北欧:馬 8本脚】
セキバホウ(石馬宝) 【中国,スイ民族:馬:石馬】
ドゥン・スタリオン 【アーサー王伝説:馬】
バリオス 【ヘレネス(ギリシャ):馬】
ハルピンナ 【ヘレネス(ギリシャ):馬】
ブケファロス 【アレクサンドロス大王:馬】
プシュラ 【ヘレネス(ギリシャ):馬】
ペガソス(ペガサス) 【ヘレネス(ギリシャ):馬:有翼:天馬】
ベエヤード 【フランス:馬:天馬】
ポクシラージ 【ヘレネス(ギリシャ):馬】
ユニコーン 【ヘレネス(ギリシャ):魔物:馬】
ルンタ 【ポェ・パ(チベット):馬:天馬】
ワステュルジの馬 【カフカス:オセット語族:馬 3本脚】
勇者の6本脚の駿馬 【ロシア竜退治 6本脚】
エポナ 【ケルト:女神:馬】
人間万事塞翁が馬 【物語あらすじ 中国:故事】


【 羊 】
羊も人間の生活と関わりの深い家畜で、特に毛を、そして乳や肉、皮などが利用される。乾燥地帯に適応し、牛や馬に比べ飼育に向く 地域は限られる。
ヒツジ 羊 ひつじ 【大項目】
クヌム 【エジプト:神:羊】
ゴルヅン・フリース(金羊毛皮) 【ヘレネス(ギリシャ):物品】


【 猿 】
猿は生活に密接に結びつく家畜動物ではないが、神や神の使いとして神聖視されたり、 人間のような奇怪な存在としての伝承がみられる。猿まわし等で飼われることもある。
猿(サル)
ソンゴクウ (中国:神)
ヌエ (日本:一部が猿の怪物)
ハヌマーン (インド:神)


【 鳥 】
最大級の大きさを誇る鷲や、黒い羽毛が印象的な烏(カラス、ワタリガラス)、美しい白鳥、その他鳥にまつわる伝承も多い。
また北半球の高緯度地域に共通してワタリガラスが神話上、重要な立場にあることがおおい。
タカ(鷹)、ワシ(ワシ)はその大きさ・威容からか、空の王者、神の鳥など特別視されることが多い。
アボリジニの伝承ではヒクイドリは神の化身である。またトレス海峡諸島域にすむ人々にはトーテムとして崇拝されている。
鳥の神話 【大項目】
カウ 【中国:魔物:烏】
ガ・ガアー 【アメリカ先住民族:烏】
フギン、ムニン 【ゲルマン、北欧:烏】(オージン)
スィームルグ 【イラン:鳥】
ソボル 【ウイグル:鳥】
タレポ 【マオリ、ニュージーランド:鳥、魔物】
  
トゥルカウグック 【イヌイット:神:ワタリガラス】


【 犬 】
犬はなぜか地獄と関連したものが多くみられる。「番犬」という役割で犬になっているのかもしれない。
オルトロス 【ヘレネス(ギリシャ):魔物:犬】
ガルム 【ゲルマン、北欧:魔物:犬】
ケルベロス 【ヘレネス(ギリシャ):魔物:犬】
マウィオング 【ボルネオ島:魔物:犬】


【 猫 】
猫は太古から人間に人気がある。一方で悪いイメージもある。知恵や魔力があると考える点では同じといえるだろうか。
ベトナムには十二支に猫年がある。
猫(ネコ,キャットcat) 【大項目:世界:動物】
アダンダラ 【アフリカ:スーダン,アザンデ民族:猫:魔物】
カシャ(火車) 【日本:妖怪:猫】
キンカビョウ(金華猫) 【中国:妖怪:猫】
ケット・シー 【ケルト,スコットランド:妖精:猫】
シャ・ノワール(黒猫) 【ヨーロッパ:使い魔】
ネコマタ(猫又) 【日本:妖怪】
バステト 【エジプト:女神:猫】
ナンセンイチモンジ(南泉一文字) 【日本:武器:刀:猫】


【 魚、水棲哺乳類 】
海の生き物や魚も生活との身近さ、食料、また海や水辺の神秘性から様々な伝説がみられる。
日本のナマズに関しては「地震」を参照。
バハムートやマツヤ(ヴィシュヌの化身)、聖書でヨナを飲み込む魚など。 うなぎ:ヤシの木の神様(タヒチ)
ウナギ(鰻うなぎ)


ウナギ(鰻うなぎ) 【大項目:動物:神話伝承】
オールフィッシュ 【ヨーロッパ:魚】
シャチ[ホコ](鯱) 【日本:幻獣,飾り物】
ン カムイ 【アイヌ:沖の神,シャチ】
リュウグウノツカイ(竜宮の使い) 【日本:魚】
関連した神話伝承 
ケヒノオオカミ(気比の大神) 【日本:敦賀:イルカ】
カル 【イラン:魚】
バハムート 【イスラーム:魚】
マカラ 【インド:魔物】
リュキ 【ミクロネシア:神:うなぎ】
リュウグウノツカイ(竜宮の使い) 【日本:魚】
ヨウギョ 【中国:魔物】


【 狼 】 →大項目「狼」
スラヴ地域では戦士が狼の毛皮のベルトをまくことで狼の力を得られるという伝承があったようだ。
狼(大神)、ウルフwolf 【大項目:動物】
ゲリ、フレキ 【ゲルマン、北欧:狼】(オージン)
フェンリル 【ゲルマン、北欧:魔物:狼】
ボルテ・チノア 【モンゴル:狼】
ルー・ガルー 【フランス:魔物:人狼】


【 熊 】
アジア・ヨーロッパの特に中緯度から高緯度の地域で神聖視された伝承がみられる。
ブリテンのアーサー王の名前は「熊」に由来する語。 アイヌや東北アジアで熊を神とする伝承がみられる。朝鮮半島にも熊女が民族の始祖を生む神話がある。 北欧の狂気にかられた戦士ベルセルクは「熊皮のシャツを着た者」の意味。
メトトゥシ・カムィ 【アイヌ:神,仔熊】


【 複合された動物 】
アンズー 【バビロニア:魔物】頭:ライオン 体:鷲
エンキドゥ 【バビロニア:英雄】半人半獣
シフゾウ(四不像) 【中国:霊獣,聖獣】
シャチ[ホコ](鯱) 【日本:幻獣,飾り物】
スープーシャン(四不像) 【中国:霊獣,聖獣】
ボラク(ブラーク) 【イスラーム:聖獣】頭:女人 体:馬 尾:孔雀 有翼
リョウマ(竜馬、龍馬) 【中国,日本:神獣】


【 その他 】
シャ・ノワール(黒猫) 【ヨーロッパ:使い魔】
バイプ 【アチェ[グアキヤ]:霊】 ジャガー
メトトゥシ・カムィ 【アイヌ:神,仔熊】
イツァムナ 【マヤ民族:神:火】 イグアナ
ヴィロ 【マウリ:神:死】 トカゲ
ヴリスラグナ 【イラン:神:戦】 猪
カル 【イラン:魚】
キキモーラ 【東スラヴ:家霊】 狐
キム・クイ 【ベトナム:神:亀】 亀
サムヒギン・ア・ドゥール 【ブリテン:ウェールズ:魔物:水】
ングルダンガル 【特別な動植物群:豪州:ジナン民族】

モリアオカエルの卵塊:広島、安芸方面ではこの卵塊をみつけると縁起がいい、延命のこぶくろ、といわれている。

カマキリの卵のう:中国では子宝に恵まれるといって縁起がいい。
【 植物 】
世界樹の伝承(ユグドラシルや白ホームの木、天まで届く木)や生命の木の伝承などがみられる。
ヤドリギ(パナケア、ミストルティン)、オーク(樫)、リンゴの木、桃の木、松の木など神聖視される草木は多い。
またヤシ、ガジュマル、マングローブ、バオバブなど精霊が宿る、魔力をもつ、とされる木も多い。
キジムナー 【日本:沖縄:精霊:木:火】 ガジュマル(聖木)
キノロヒンガン 【ボルネオ:ドゥスン民族:女神】 
ククノチ 【日本:神】
ナギ(なぎ、梛) 【日本:神木】
ミストルティン 【ゲルマン,北欧:宿木,剣】
ムロノキ(室木、ネズ) 【日本:神木】
ユグドラシル 【ゲルマン,北欧:樹木:世界樹】

 

関連項目一覧
ネコ (猫,キャット cat) (大項目:動物)
猿(サル)
ウナギ (鰻うなぎ) (大項目:動物)
バラム(ジャガー)  (マヤ:中南米アメリカ:神、動物)
ホタル(蛍) (日本:虫)

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