ユダヤ民族、ユダヤ文化圏ともいうべきものは、各地域では少数派でありながら、世界各地に確固として存在する。
ユダヤ教という信仰と伝統文化をしっかりと世代間で伝えている結果であるといえる。歴史背景や状況は大きく違うものの、
漢民族やアフリカ文化などと並んで、地域に限定されない文化圏のひとつといえる。
後述するがユダヤの語源は古代ユダ王国で、ユダは「(神を)賛美する」という意味。
ヘブル人、ヘブライ民族、イスラエル人などの呼称があったが、元々はカナーン民族が交易をする中で自ら名づけた名称として ヘブライHebrewが発生したようだ。「(ユーフラテス川の)向こう側からやってきた人々」の意で、eber(向こう側)という言葉が由来している。 バビロニアからシリア、現パレスチナ地域へ移住してきたカナーン人が後に古代のイスラエルを建国し、イスラエル人を自称した。 これは創世記で、ヤコブが「お前は神と人と闘って勝った」のでイスラエル(神の戦士)と名乗るようにいわれ、 その子孫が増えてひとつの国になるという伝承に由来したのだろう。
イスラエルについては紀元前BC13世紀頃のエジプトの記録にイシリアルとある。BC932年に南北に分裂し、
南はヤコブの息子の一人ユダJudahの流れ汲む人々が多いのでユダ王国を名乗った。このユダは「(神を)賛美する」という意味。
アッシリアが紀元前BC722年に北を、新バビロニアがBC597年にユダ王国を征服し、バビロンに捕虜1万人を連れ帰った。この時「ユダの国の人々=ユダヤ人」となったという。
BC538年、イランによって元の土地へ帰還し、国家、地域はやはりユダヤと呼ばれたようだがローマによってAC70年に神殿が破壊され、滅亡してしまった。
ユダヤ民族で語られる民話は、世界に多くの類話があるものも多いが、伝説、物語においてはユダヤ教を抜きにして語ることはできないだろう。
ユダヤ教の聖典はトーラー(「律法」「教えること」の意)と言って、ヘブル語聖書の最初の部分であるモーセ五書であるが、広い意味ではモーセ五書の、ラビによる註解、派生した法、物語部分から生まれた論題、物語を含む。あるいは宗教的文学全てが含まれるようだ。
トーラーの法的な内容はハラハーといい、物語部分から生み出された論題や物語をアッガダー(「語ること」の意)という。アッガダーは教化のため、聖書に説かれていない部分や矛盾の調和、疑問に答えるものであるという。
ユダヤにおける物語は広義のトーラー、つまり狭義のトーラーであるヘブル語聖書のモーセ五書、ミドラシ、タルムード、ラビ文献などからなる壮大なものだが、それらは狭義のトーラーである聖書に人々を近づけることに意義を持つのだという。
ミドラシ(複数形ミドラシーム。「求める」「探求する」の意)は、このアッガダー的素材を集約したものの最古のもので、紀元後から数世紀の間パレスチナのシナゴーグ(ユダヤ人会堂)でラビによって行われた聖書に関する説教から生まれた。
またユダヤ教の法の集成「ミシュナー」を拡大した「タルムード」にも様々なラビの物語などが語られている。
世界のユダヤ人のうち、ヨーロッパでは東欧系のアシュケナジムAshkenazim、スペイン・ポルトガル系(北アフリカ、地中海、オランダ、イギリス)の セファルディムSephardimというグループがある。アシュケナジムはドイツ語とヘブライ語の混合したイディッシュ語を、セファルディムはスペイン語化 したラディノLadinoを使う。
(C) 幻想世界神話辞典 - GENSO SEKAI Myth dictionary